天才パイロットは交際０日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

「でも、私も本気で好きな人ができて考え方が変わった。暁月にも、愛する人と家族を作って一緒に生きていく幸せを味わってほしいなって本当は望んでたの。私も自分が親になるなんて思わなかったけどさ……わりといいもんよ、結婚って」

　奈々ちゃんを優しい眼差しで見下ろして微笑む彼女を、相良さんも神妙な面持ちで見ていた。これでまた少し気持ちが変わっていくかもしれない。

　陽和さんは「なんか急に語ってごめん」と謝り、清々しそうな笑顔を浮かべる。

「や〜本当によかった、暁月がこんな可愛い彼女を見つけて。お父さんにもそれとなく言っておくわ。いずれ挨拶しに行くでしょ」
「……は？」

　相良さんがギョッとした様子で声を発した直後、彼の足にくっついていた奈々ちゃんが突然「あっ、パパ！」と言ってビルへの入り口に向かって走り出す。

　どうやら陽和さんたちと合流しに来たらしい。人にぶつかりそうになりながらトコトコと走っていく奈々ちゃんを、陽和さんは慌てて追いかける。

「こらっ、奈々待って！　ごめん、また今度皆でゆっくりご飯でも行こ。お幸せに～！」
「おい、姉さん……！」

　こちらに手を振る彼女を相良さんが呼び止めようとするも、嵐のように去っていってしまった。