天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
「はいぃ!?」

 思わずすっとんきょうな声を上げてしまったが、人はまばらなのでそこまで注目は浴びない。私は目が点になったまま、まぬけヅラで固まった。

 結婚を提案されたんですよね、今……一体全体どうして!?

 唖然とする私に、相良さんは至って冷静に言う。

「降旗さんにとっては憧れだったんだし、他にもメリットがあるんじゃないか」

「ほ、他のメリット……?」

「結婚すれば拓朗も言い寄らなくなるだろうし、自然にあいつのことも気にならなくなるかもしれない。強制的に他の男を意識する状況が、結婚によって手に入れられるわけだ。キスより効果的だろう」

 彼が不敵に口角を上げ、再びあの雪の日の情景が蘇って胸がざわめいた。

 確かに、ずっと一緒に密な時間を過ごす旦那様ができれば、嫌でもその彼のことを第一に考えるだろう。ふたりだけの世界を作る方法があったとは。

 ちょっとだけ心が揺らぐ……けれど、さすがにいろいろ問題がありすぎて頷けない!

「でも、そんな相良さんの人生に関わること、私のためにさせられるわけないじゃないですか! あなたを利用するんですよ?」
「利用される気なんてないが」

 きっぱり返され、面食らう私。彼は意味深な面持ちで自分の気持ちを語る。

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