天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
 あの瞬間、彼も同じ気持ちを抱いていたんだ。それだけでなんだか嬉しくなってくる。

「……実は私も、まったく同じことを思っていました」

 そう打ち明けると、相良さんも少し目を丸くした。一瞬見つめ合った後、お互いにふふっと笑みをこぼすと同時に肩の力が抜けていく。

 ふたりきりも悪くないという、あの直感に従ってみるのもアリかもしれない。漠然とだけれど、私たちならうまくやれそうな気がする。仕事に集中するためにも、彼の力をお借りしたいのが本音だ。

 ただ、本当にその選択をするなら事前にちゃんと話しておいたほうがいいだろう。

「あの、ひとつお願いが」
「なに?」
「結婚するなら、ちゃんとした夫婦になるために努力し合いませんか? 一緒に食事したり、休日は時々デートしたり、なるべくふたりで過ごす時間を作って、お互いのいいところも悪いところも全部知った上で一緒に生きていく努力を」

 どんな始まり方であれ、人生を共にするのなら協力し合うことは必要じゃないだろうか。

「決して相良さんを縛りつけるつもりはありません。ただ、温かい関係を築けたら結婚はいいものだってより感じられるはずだし、私も愛が生まれたらいいなって思うから」

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