天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
「私も、好きになってもらえるように善処します」

 ドキドキして変に堅苦しくなる私に彼はクスッと笑い、「楽しみにしてる」と余裕たっぷりに返した。

 結婚してから恋愛しようとするのは難しいだろうか。どうなるかまったく予想できないけれど、一緒に暮らして私たちにどんな変化が起こるのか興味はある。

「とりあえず、まだ知らない部分が多いからまずは教えてくれないか。莉真のこと」

 他人行儀じゃない名前の呼び方は、私たちの関係を変える合図のように思えた。胸に生まれるわくわく感は、飛行機がテイクオフする前に感じるそれと似ている。

「……私にも教えてください。暁月さん」

 彼の言葉に頷いた後、私も照れながら名前を紡いだ。

 滑走路では、離陸に向けて今また飛行機がスピードを上げていく。奇しくも急接近した私たちも、新しい未来に向けて進み出す。

 行き着く先は、どうかハッピーエンドでありますように。


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