天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
秘密裏ブリーフィング

 前向きに結婚を考え始めた私たち。ひとまず展望デッキから徒歩十分の場所にある隠れ家的なフレンチレストランに移動して、ディナーをいただきながら話をすることにした。

 店内はアンティーク調のペンダントライトが照らす灯りでほの暗く、半個室のソファ席は落ち着いて語らうのに最適だ。明日はスタンバイのためお酒を控える彼に合わせて、私もノンアルコールのドリンクにしている。

 以前シエラで飲んだ時に皆で話した内容をおさらいしたり、パイロットの勤務内容や勤務事情、住んでいる場所など、彼自身の詳しい情報を教えてもらったり。

 そして、本当に結婚するならいつから一緒に暮らし始めるか、お互いの家族への挨拶はどうするか、会社への報告は……などなど、具体的な話も進めていった。

 その中でお父様がなにをしている人なのかを聞き、驚いた私は無意識に背筋を伸ばす。

「暁月さんのお父様って、航空局の人事部長だったんですか!?」
「ああ、職業からしてお堅いだろ」

 暁月さんは、赤ワインで煮込まれた牛肉にナイフを入れながら嘲笑を浮かべた。

 航空局の部長というと、私たちの上のそのまた上のお方ではないか。お目にかかったこともないけれど、肩書きを聞いただけで恐縮してしまう。人事の権限も持っているのだし。

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