天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
「おかげで俺も家事はそこそこできるから、莉真が忙しい時も心配しなくていい」

「それはすごく助かります! 暁月さんの留守中も、家のことは任せてください。帰ってきたら、両親直伝のシエラの料理でおもてなししますね」

「いいね、一緒に晩酌しようか。フライト終わりが楽しみになりそうだ」

 彼が穏やかな笑みを湛えて言うので、胸がほっこりと温かくなった。

 本当にそんな風に過ごせたら理想的だ。そううまくいかないのは承知しているけれど、ふたりで協力しながら普通の生活を送れたらいいな。

「こうしていると忘れるだろ、あいつのことなんて」

 本来の目的を思い出し、呆れ交じりの笑みが漏れる。その通りなので、自分チョロいなぁと自嘲しつつ「ですね」と認めた。

 確かに、今話しているだけで城戸さんのことは頭から抜けていた。この調子でずっと暁月さんといれば、彼と顔を合わせても平気になりそう。

 暁月さんこそ、さっきからわりといい反応をするように感じるし、まんざらでもないんじゃないかな。

「暁月さんも、想像すると結婚もいいと思えてくるでしょう」

 ちょっぴりいい返事を期待して言うと、彼はテーブルに肘をついてふっと口元を緩める。

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