天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む
「まだまだだよ。もっと俺をその気にさせて」

 なんだかセクシーなSみを感じてドキッとするも、頷いてもらえなかったのでむくれる私。そう簡単には落ちないらしい……楽しそうにこれからの話をしていたくせに。

 ひと筋縄ではいかなそうな彼は、ややブラックな笑みを湛えて言う。

「俺はたぶん、君の想像以上に扱いづらい男だと思うけど、末永くよろしくね」

 暁月さんが優しいだけの男ではないというのはすでに承知している。うまくやっていける確信はないが、努力はすると決めたのだ。女に二言はない。

 改めて覚悟を決め、背筋を伸ばして姿勢を正す。

「私こそ、面倒くさくて可愛げのない女ですが……よろしくお願いします」

 就職の面談か、とツッコみたくなるような調子で頭を下げた。しかし、暁月さんはどこか満足げに私を見つめている。

「莉真は十分可愛いよ」

 甘さを増した声が、鼓膜と共に心も揺らした。口先だけなのか本心なのかわからないけれど、単純に嬉しくなってしまう。

 この人が旦那様になるって、今さらながらいろいろとやばい気がする……。暁月さんのファンもいるだろうから周りの反応が怖いし、私自身もドキドキさせられまくりそう。なにせ男性とひとつ屋根の下で暮らすのも初めてなのだし。

 でも、どう転がっても後悔はしない。これが私の決めた道だから。


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