天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 一日だけの短い休日を終えてオフィスに向かうと、すでに城戸さんがデスクに座っていた。

 休み前に微妙な別れ方をしたので、気まずさを感じつつ近づいていくと、私に気づいた彼は爽やかな笑顔で「おはよう」と言った。

 わりと普通だ……と、ほっとしつつ私も挨拶を返し、各空港の今日の注意点について確認し合う。

「今日は八丁島でテレビ局の取材のヘリが飛ぶらしい。チャーター便も一機来るし、変則的になるから気をつけて」
「了解しました。天候もよさそうですね。少し風が強めですが」
「ああ、ヘリポートが使えないほどじゃないだろう」

 私たちが担当しているエリアでは飛行機よりも島々を結ぶヘリが飛ぶ頻度のほうが多い。今日のようにイレギュラーな時はやや大変なので、どの便がいつ飛ぶのかをしっかり頭に入れておく。

 打ち合わせが一段落ついたところで、自分のデスクに座ろうとした時……。

「で、暁月とはどういう関係?」

 不意打ちで聞かれ、想定はしていたもののぎくりとしてしまう。ニコニコの笑顔がやけに怖いし。

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