可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
「反省してるのか?」
エリアーナがこくんと頷くのが素直で可愛くて、サイラスの尾てい骨が疼きまくった。悪い顔してヒャッハーしてるのも大好きだが、手がかかる可愛い子の成長はかくも美味だ。
「謝りたい?」
エリアーナがピンクの目からぽろっと涙が落ちた。お腹が痛い時と、癇癪を起した時以外の涙を、50年エリアーナを育ててきたこのサイラスでさえ初めて見た。
サイラスはエリアーナのピンク眼から落ちた涙を指ですくう。
小瓶に溜めておきたい尊さだ。
「どうしたら、謝れるか。考えてみようか」
「先生、一緒に考えてくれる?」
くるんとしたピンクの瞳で見つめられるとサイラスは揺れ動いた。賢者サイラスともなれば、謝る方法など百通り思い浮かぶ。
だが、賢者なればこそ、弟子から手を離す瞬間も心得ている。
可愛いエリアーナは伸び盛りなのだ。変わろうとする彼女を一番近くで見ていたい。
「この問題は、エリアーナひとりで考えてみようか」
「うちにできるかな」
「できるよ、エリアーナなら。僕もついてる」
ピンク眼を腕でゴシゴシ拭いたエリアーナは、うんと頷いた。アホだからこそ素直でまっすぐな彼女は、こんなにも愛おしい。