可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
魔族の恋愛観念は超個人的見解であり、多種多様だ。だが、基本的に長寿である魔族は恋愛に対して悠長な傾向にある。
そのため、婚姻し、番になってから1年や2年で生殖する方が「珍しい」のだ。そんなことが表立ったならば、ただのド変態である。
ゆっくりと片思いを楽しみ、両想いになって手を繋ぐまで3年なんて短い方で、抱きしめ合って5年、キスして10年、20年で生殖いたしましょうか。まだ早いですか?というのんびりさが通例だ。
長寿族のサイラスなど、エリアーナに片思い50年目。果てしなく気が長い。
魔族で番ってすぐに生殖してしまうのは「野生型の野蛮な典型」と蔑すむ意識がある。
もちろん。魔族に恋愛の常識、などはない。そんな通例を踏み越えようが踏み止まろうが自由だ。
だが超個人主義であるがゆえに、個人に根付く、自分なりの価値基準が重いのだ。500年生きて来たジンの超個人的見解には生殖はゆっくりが紳士、の意識が根づいていた。
古い考えと言えばそれまでだが、ジンは500歳越えだ。古い考えを持っていても不思議はない。「早いは野蛮」で大切に扱っていないことになる。
ジンは幼な妻がとても、愛しいのだ。