可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
「ベアトリス、君はこれ以上なく愛らしく、私は君に心酔している。だが、私は君に紳士でいたいんだ」
「妻を辱めないのが紳士でなくって?私だって魔王様が恋しいですのに、赤ちゃん扱いは酷いです。
今日はもうお暇いたします!」
ベアトリスはぷんすこ部屋を出て行ってしまう。仲良くお喋りしたかった夜の生き血ジュース茶会はお預けだ。
一人部屋に取り残されたジンは背中からベッドに倒れて、両手で顔を覆った。
「あああー我が妻が何しても可愛いー」
幼な妻があんまり可愛く怒って、目を潤ませて誘惑してくるので困る。
大切だから。初めて名前を付けた愛だから。もっとのんびり、ゆっくり時間をかけて育みたい。
魔王とあれど、好きな相手に野蛮と思われたくないのが恋心だ。強引に逃がさないなどとプロポーズしたくせに、生殖行為は慎重に。男心も繊細なのだ。
ベアトリスが誘えば誘うほど、ジンは紳士さを試されていると己に枷をかけねばならない。
(500歳も年上だよ?幼な妻に余裕を見せて紳士に思われたいじゃないか)
キスしてほしい幼な妻と、キスして変態と思われたくない超年上旦那様。
人間と魔族。異種婚の見事なすれ違いである。