可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
「仲直りの方法を決めようか」
ジンがベアトリスの髪を細い指にくるくる絡めて、指先で慈しむ。ベアトリスは髪先まで愛されているような気がして落ち着かなかった。
「私たちはそもそも種族が違い、お互いの文化が違い、きっと思想も違う。だが、愛しい気持ちだけは常に共通している」
「間違いありませんわ」
愛を伝え合ったことは、揺るがない事実だ。お互いに愛しく見つめ合って微笑み合う。
「だから、どんなに意見が食い違い、ぶつかった時でもこう言って欲しい」
ジンが歩み寄ってくれる言葉を、ベアトリスは耳に焼き付けた。
「可愛くてごめんあそばせ、と」
思わず破顔したベアトリスの自然な笑みにジンは満たされる。
「それでいいのですか?」
「君が最高に可愛くて愛しいと刻みつけられる、私のお気に入りの台詞だ」
「おじい様直伝ですわ」
「おじい様は趣味が良い」
二人で顔を見合ってクスクス笑いあった。ジンが立ち上がりベアトリスに冷たい手の平を差し出す。
ベアトリスは小さく柔い手でその手を取り、立ち上がった。
「手を繋ぐのも、実はお早いんですよね?これって」