可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─


ベアトリスがふっと甘い息を残すと、ジンの耳が急に熱を持ってピクピク騒いだ。みぞおちのゾクゾクが背を通って腰にクる。


ジンが慌てて耳を手で覆って顔を上げると、してやったりとベアトリスが華麗に笑った。


「これで仲直りですわ」

「私の妻は悪戯好きで困ったな」


ジンはじんじんと熱を持つ尖った耳を擦り、綺麗過ぎて冷たく見える頬さえも朱に染まってしまった。



「私を煽るのは大概にしてくれ奥様」

「もう一度痴女ってしまいましたから、ベアトリスには怖いものがありませんことよ旦那様」



ベアトリスが仲直りと悪戯成功にクスクス笑って、魔王城へと先に歩いて行く。スカートを翻して振り返ったベアトリスは大きな声で宣言した。



「魔王様!ベアトリスは王妃です。魔国に入れば魔国に染まります!」



ジンは未だに熱い尖った耳がピクピク動くのを手で抑えつけた。



「魔王様にキスしてもらえる日を、きちんといい子で待てますわ!」



手を出してこない超年上旦那様には、強気な奥様である。ベアトリスは軽快にスキップして魔王城へ向かっていく。



(参ったな、全く。私がいつまで我慢できるか試そうというのかい?)



ジンはベアトリスの背中を見つめて甘いため息をついた。

可愛くてごめんと言われても、許せずはちゃめちゃに愛したくなるほどに幼な妻は可愛い。

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