可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─

封印呪文の詠唱を始めるエリアーナにサイラスは首を傾げる。エリアーナの詠唱に伴って、裏庭中のパクンが球体の中に圧縮されていく。


地面に這いつくばったベアトリスは封印術の展開にあんぐり口を開けた。



ベアトリスを襲い狂っていたパクンも球体にぎゅうぎゅう詰めにされ、ベアトリスは感心の声を上げた。



「これが封印術?すごいですわ」


「上手だね、エリアーナ」



エリアーナはピンク眼に涙をいっぱい溜めて、サイラスの前に立った。サイラスのほめ言葉にぴょんぴょん喜ぶと思ったのに無言だ。


エリアーナの目に涙がいっぱいで、サイラスはきょとんとする。最近、エリアーナの情緒は成長が目覚ましい。一瞬たりとも見逃せない。


「先生!今日は忙しいから遊ばれへんって言うて、なんであの女と遊んでんの?!」


大きなピンク眼からぼろぼろ涙がこぼれ出た。大好きな先生を盗られたエリアーナの嫉妬爆発だ。


憧れのジンも、大好きな先生だって、全部エリアーナのものだ。謝るより先に自分のものを確保しないといけない。これこそ赤ん坊の所業。


「エリアーナ、これは仕事で仕方なくだよ」

「先生がうちとの遊びより他の女と遊ぶなんて今まで絶対なかったやん!」

「最近、ジンの頼みごとが多くて」

「先生はもう、うちのことなんていらんねんやな!」

(えぇええ嫉妬カワワワー!!)


エリアーナの嫉妬爆弾で、サイラスの尾てい骨のムズムズが爆発しそうだった。サイラスは尾てい骨で恋をする。


エリアーナの独占欲の内に、やっとサイラスの場所ができたことにサイラスはにこにこである。


50年の片思いがやっと前進を見せる。

これこそゆっくり育てる魔族の恋の醍醐味だ。

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