可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
サイラスはぼろぼろ泣いているエリアーナの手を握って、子どもらしくとびっきりの可愛い笑顔を見せた。
(え、私だけ置いてきぼりなのですが)
地面に這いつくばって、遠目に二人を見ていたベアトリスには、サイラスの笑顔は胡散臭くて仕方ない。
「僕が大切なのはエリアーナだけだよ」
「でもうちのこと放っといて他の女と遊んでたやん」
うさ耳がしゅんと垂れて、エリアーナが口を膨らませてツンとする。サイラスは余裕の笑みでエリアーナを覗き込んだ。
嫉妬も抜群に可愛く感じる年の功である。
「あんなの女じゃない。生物でもない。ただの細胞だ」
「サイボウ?」
(ものすごい暴言ですわ!)
すっかり裏庭に取り残されたベアトリスは、二人の世界を見守るしかなかった。
「僕にとっての可愛い弟子も、目に入れても痛くない女の子も」
「さすがに目に入れたら痛いで先生」
「仲良くお茶したいのも遊びたいのもお昼寝一緒にしたいのも全部エリアーナだけ」
「ほんまに?」
「もちろん。寂しい想いさせて悪かったね。今から一緒に遊ぶ?」
「うん!先生大好きや!」
エリアーナがサイラスを力いっぱい抱きしめると、サイラスは両足が浮いてしまう。ふよふよおっぱいに顔面が埋もれて、エリアーナに嫉妬してもらえて。
サイラスは寿命が来るかもしれないほどの幸福を味わった。