可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
エリアーナはサイラスを地面に下して大復活を遂げた。
「エリアーナ、パクンの封印を解いてくれる?」
「ええで、先生の頼みや」
エリアーナは両手を打つことはなく静かに逆詠唱を始めて、パクンの封印を解き始める。封印解除は口頭のみで行えるらしい。だが、焦ったのはベアトリスだ。
「封印を解く?!ま、まさかもう一回始める気ですの?!」
「僕は今からエリアーナとお茶する急用ができたから。夕方までパクパクされたら帰っていい。本当に食べられたら笑ってやる」
「ちょっとサイラス様もう少しヒントぉおお!!いやぁあ!」
ベアトリスにパクンが襲い掛かり始めて、エリアーナはうさ耳をぴょこんと立ててゲラゲラ笑った。
「キャァーー!!」
「うちの先生、盗るなんて許さへんで。ほなな、サイボウ」
サイラスとがっちり手を繋いで、ご機嫌のエリアーナはベアトリスにざまあとばかりに別れを告げた。
アホエリアーナは、ざまあが先行して謝ることがすっかり頭から抜け落ちた。
エリアーナは封印術を行うための封印呪文の暗記にのみ頭の容量がほぼ全部使われている。なのでその他に関する頭の容量が至極小さいのだ。
「僕の可愛いエリアーナに良いヒントをもらったはずだ。壁はああやって使う。よく考えろ」
サイラスは極上にゴキゲンな笑みを浮かべてエリアーナと手を繋いで去っていく。
「本当に置いて行くのですかぁ?!キャアぁあ!!」
裏庭では、夕方までベアトリスの叫び声が響き渡った。
何を隠そうこの訓練、発案者は魔王様である。