可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
初代魔王様の加護について詳しくは解明されていないので、使い方は己で掴むしかないとサイラスは言う。
(エリアーナ様が良い見本を見せて下さったと、サイラス様はおっしゃったけれど。いまだにその意味もわからないわ)
アイニャの墓の前でベアトリスは悶々と愚痴をこぼす。弱音を落とす場所があるのは癒される。アイニャの愛しい「ニャ」の声が今でもベアトリスの中にあった。
「今日は声を聞かせてくれないんだね」
「ま、魔王様?!今日は声を出してませんことよ?!」
忽然と背後に現れがちな魔王ジンだが、今日はお空から登場した。魔王様の背中にはコウモリのような羽が生えていて、飛んできたご様子だ。魔術の多様性ったらない。
ベアトリスの隣に着陸したジンは羽を消して、クスクス笑った。
「声が聞こえなくても、妻のいる場所くらいわかる」