可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
薄透明の丸くてぷるぷるした生物は目も口もないのに、どこからか声が出る。ぷるるは身体をバインと跳ねてベアトリスの肩にちょこんと乗った。
「あなたが、初代魔王様の加護様ですか?」
「ぷるるー!」
ぷるるは嬉しそうに声を上げるとベアトリスの頬にぷるぷるを寄せた。ぷるんと頬に冷たい感触がしたかと思うと、ぷるるはどんどん膨らんでいく。
「どうなっていますの?!」
ベアトリスが抵抗する間もなく、ぷるるは薄青い身体の中にまるっとベアトリスを包み込んでしまった。息苦しくも何もなく、生温い感覚が肌に伝わっただけだ。
「なるほど、加護様の身体に取り込まれていれば安全だったわけだね」
「もしかして今までもずっと加護様が守ってくれていたのですか?」
「ぷるる!」
ゴキゲンに高い声で返事をしたぷるるは、どんどん巨大化して薄青い体の範囲を広げていく。
ベアトリスを取り込み、ジンを取り込み、アイニャの墓まで取り込んでしまった。
ベアトリスはぷるるの言いたいことを理解しようと語り掛ける。
「もしかして、加護の範囲を広げてくれたのかしら」
「ぷるる!」
大きく膨れ上がったぷるるの返事は軽快だ。すっかり加護に取り込まれたジンが顎に手を添えて、うむと頷く。
「仕組みは理解できた」
「え?!私にはまるでわかりませんが?!」