可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
「どうしてですの?私の意志で加護様が力を貸してくださるなら心強いですわ」
「妻の身体に他の生物が住むなんて嬉しくはない」
ジンが大仰に腕を組んで、綺麗過ぎて冷たく見える顔をますます硬くする。
「まあ、旦那様の狭量なところを見て、私は嬉しくなってしまいましたわ」
肩に新しい加護をくっつけたベアトリスは手を口元に添えて品よく笑った。ジンの嫉妬など見れて得してしまった。
「ですが、これで私は魔王様のお役に立てるかもしれません。強い王妃への第一歩!ぷるる様にはぜひ私の肩に住んでいただきますわ!」
「ぷるる!」
ぷるるがほっぺたにくっつくと、ベアトリスはアイニャに向けたようなうっとりした顔をする。ジンがくっきりと眉間に皺を寄せた。
「我が妻は生き物がお好きらしいが、この世で君の一番好きな生き物は私のはずだが?」
「ふふっ、私の旦那様が可愛いですわ」
ジンの嫉妬を浴びて、新しい加護を得たベアトリスはやる気に満ち満ちた。沸々と闘志を燃やし始める。
「見ててください、魔王様!私、ぷるる様と一緒に、パクンを裏庭から追い出してみせますわ!」
「ぷるるー!」
片手を空に突き上げて奮起するベアトリスと一緒に、ぷるるはベアトリスの肩の上でぴょこんと跳ねた。
強い王妃を目指して一歩前進したことを喜ぶベアトリスは、溌剌と可愛い。
ジンは超年上旦那様としての矜持で、ぷるるを追い出すことはしない。妻の身体に誰が住んでいようが愛されているのはこの私、と余裕を見せる場面である。
だが、ベアトリスのほっぺたにすりすりぷるぷるしているのは、
断固気に入らない。
(ぷるぷるほっぺした回数の百万倍は私がすりすりすべきだ。それが夫の権利だ)
超年上旦那様は非常に心が狭かった。