可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─

ベアトリスがイノシシ令嬢たちを論破して、城中を歩き回り罵声を聞き飽きるほど浴びたあと、やっと目的地であるキッチンにたどり着いた。


キッチンは主に骸骨たちのナワバリらしく、コック服を着た骸骨、メイド服を着た骸骨が忙しそうに動き回っている。


「うちの目盗んで、食べ物取ろうなんてムリやで?」

「あら、ごきげんよう。エリアーナ様」


キッチンを発見して5秒も立たないうちにうさ耳メイドのエリアーナに見つかってしまった。

空中にふよふよと浮いて胡坐をかいている。魔族はふよふよ飛んだりもできるのか。スカートの中が丸見えだ。


「涙一粒、流すんやったら、やっさしいエリアーナ様が食べ物あげてもええで?お腹空いてるやろ?」


完全に勝ったと鼻を膨らませるエリアーナの不愉快な声を聞いて、ベアトリスはにこりと品よく綺麗に笑った。



「結構ですわ」

「あ?ほんまにええんか?餓死すんで?」

「初代魔王様の加護を頂いておりますので平気です」

「は?!加護ってそんな力まであるん?!」



ベアトリスは左手の薬指にはまった古臭い指輪をエリアーナに見せつけた。

エリアーナが手を伸ばして指輪に触れようとすると、バシンッと弾き飛ばされる。


「痛ッっぁあ!」

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