可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
自分もヤりたい魔王様
顔に平手打ちの痕がついたジンとベアトリスは、夜の魔王城のテラスで月夜を愛でて、お喋りしていた。
「サイラス様とケンカなさったのですか?」
「あの爺さんは本当に強情なんだ」
涙の小瓶争奪戦は結局、魔王城の破壊とサイラスのボイコットによる魔国政治機能の停止を恐れたジンが折れた。
生贄姫の涙を「小瓶半分」だけ譲渡することで決着した。
魔王族以外が飲むとどうなるのか、サイラスの研究心に火を点けたようだった。
「まあ、爺さんだなんて!」
「1500歳だなんて爺さんでしかないよ」
ふふふと楽し気に笑うベアトリスだが、ジンには不満の残る結果だった。
そんな夫婦の会話の横で、初代魔王様の加護様ぷるんはベアトリスの肩の上で当然と存在している。
「加護様、夫婦の時間は遠慮していただけませんか?」
「ぷるん」
ぷるんはぷるぷる拒否を示す。何度もこのやりとりを見ているベアトリスは、テラスの柵に腰を掛けてクスクス笑った。
ぷるんは初代魔王様の力の一部なので、ジンでさえ敬語を使うところが面白い。初代魔王様は偉大なのだ。
「ハァ、いつ二人きりになれるんだ」