可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
「ぷるん様は肩に住むのが条件ですからね」
にこにこ微笑むだけで、まるで迷惑そうにしないベアトリスにジンはため息をついた。仕方ないとあきらめたジンは、パチンと指を鳴らす。
「失礼いたします、加護様」
「あれ?ぷるん様どこに?」
ベアトリスの肩の上から一瞬でぷるんが消えてしまった。ベアトリスは慌てて立ち上がって首をきょろきょろするが、ジンはふふんと笑うだけだ。
「しばし私たちの目にだけ見えないようにしただけだよ。加護様はいつもそこにいる」
「そうですの?魔術は多彩ですわ」
「しかし、加護様の力はお強いのでこれもほんの一時だ。
ベアトリス、話があるんだ」
「なんでしょう?」
やっと、見かけだけでも二人きりになったジンはベアトリスに一歩近づいてその頬に手を添えた。
最近、ベアトリスはぷるんに夢中でジンに潤々してくれていない。
「ベアトリス、私は毎日、加護様だけ君を独り占めして狡いと思っているんだ」
「そんな、加護様は肩に乗っているだけで私はいつも魔王様のものですわ」
無垢にまっすぐ告げるベアトリスに、噛みつきたい衝動を抑えて、ジンは頬を撫でるにとどめる。
もう変態の誹りを受けてもいいから襲い掛かってしまいたい。野生型に堕ちることさえ魅力的に思えてくる。
だが、超年上旦那様の矜持としてそれはできない。堂々巡りだ。
「君が愛しているのはこのジンだ。
だが、わかってはいても、苦しいものは苦しい。狡いと思えば狡い」
眉間に皺を寄せて、美しく冷たい印象の顔を白くするジンにベアトリスはつい満たされてしまう。
「このどうにもならない苦しさをおさめるために」
求められると、心の隅々まで嬉しくなる。
「私も君に加護を与えたいんだ」