可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
「へ?いいのですか?え?」
何年でも待つ気でいた口づけが不意に降ってくるなんて、ベアトリスは予想だにしていなかった。
視線を泳がせておろおろし始めたベアトリスを見て、ジンはいい気分だった。久しぶりにベアトリスがジンでいっぱいになった。
「魔王様が変態認定されてしまいますわよ?」
「これは儀式だ。肉欲ではない」
「そういうものですか?!」
「そういうものだ」
ニヤニヤするジンがベアトリスの両頬に冷たい手の平を添える。
ベアトリスは全く逃げ場がない。月夜の下で妖艶に微笑む超年上旦那様を見つめる。
「唇を通して、加護を与える」
「あの、その、待ってくださいませ。心の準備が」
「待てない」
「ど、どうしてですか。魔族は気が長いと学びましたわ!」
「では私は気が長くない方の魔族、ということだ」
「屁理屈ですわ!それを言い始めたら根本が揺らいでキスなんていくらでも」
恥ずかしくてわあぎゃあ喚くベアトリスにうっとり笑いかけて、ジンは低く静かな声を響かせた。
「我が妻、ベアトリス」