可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─

ベアトリスは口を閉じて唾を飲み込み、今から訪れる口づけに大いに期待してしまった。

恥ずかしさが天元突破していくベアトリスの瞳に自然と潤みが溜まっていく。



鼻先がくっつき、ジンの息が顔にかかった。

顔がくっつきそうなほど近づいてもジンの真っ赤な瞳は閉じられることがない。



「ああ、私は君が全て愛しい」


幼な妻の初心な反応を大いに楽しんだジンは、ぎゅっと閉じたベアトリスの目尻に滲んだ涙をひと舐めする。


「私だけの涙を、特に愛してしまっている」


命が伸びるほど美味しい。


ビクリと体を揺らす妻の反応を楽しんでから、ジンはゆっくり、ゆっくりとベアトリスの唇に唇を重ねた。



「我が加護を、我が君に」



ベアトリスの唇に冷たいジンの唇が重なって、はむと一つ食べられる。唇から熱いものが胃に落ちていくのを感じた。


そっと離れていった唇を惜しく思ってしまう。


ベアトリスが目蓋を持ち上げると、柔和なジンの笑顔が待っていた。


「御馳走様。一回しかできないなんてもう、可愛くて困ってしまうね」



初めてのキスの後なんて、ベアトリスはどうしていいかわからず頬は熱くなって瞳が潤み続けた。夫の余裕綽々の笑みがなんだか悔しい気さえする。



「か、可愛いくてごめんあそばせ!」



照れ隠しでプイッと顔を背けたベアトリスに、ジンが声を上げて笑った。


「ぷるん!」


すっかりぷるんの透明化も溶けてしまっていたが、ジンは何度もぷいぷいするベアトリスの顔を追いかけてのぞき込む遊びに夢中になった。


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