可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
「離せ!ワニおっさん!!」
地面に貼り付けられているエリアーナのメイド服をワニおじさんの鱗だらけの手がめくり上げる。
「何すんねん!勝手に女の子の服脱がしたらあかんねんで!?」
エリアーナの綺麗なお腹が空気に晒された。フェルゼンは、エリアーナの白くて綺麗なお腹に鋭い爪を立て、ツツツと赤い線を描く。
「ッ?!」
「このまま腹裂かれて死にたくないよねぇ?」
「痛ッぁ!なにすんねんアホ!」
エリアーナのお腹に縦の赤い傷跡が入る。傷口から血が流れて、お腹の側面を伝って地面を濡らした。
エリアーナは痛みと赤い血にゾッとした。己が傷つけられた恐怖に震えてくる。
(血……嫌やナニコレ、痛い、怖い)
封印術を手に入れてからエリアーナはアホアホ言われつつも襲われるようなことはなかった。
実際強かったからだ。
だが、弱点である両手を縫い留められたらこんなにも弱い。
このまま腹の中を裂かれる恐ろしさにエリアーナのピンク眼から涙がこぼれだした。
(先生、先生、助けて……うち、こんなん怖い)
「言うこと聞いてもらおうねぇ」
裂けた口から鋭く尖った歯を覗かせて厭らしく笑うフェルゼンに、エリアーナは頷くしかなかった。