可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─

サイラスの魔力が揺れる。魔力を認知できない人間のベアトリスでも腹の底がビリビリするほどだ。


「エリアーナを誘拐か。確かに知恵も策略もあるね」

「僕がかけていた魔術を全部かいくぐるずる賢さもだ。忌忌しい」


ジンはベアトリスの肩を抱きよせて、眉を寄せた。サイラスも珍しく参ったと額に手を置いてため息をついた。


状況を把握したジンがサイラスに素早く指示を出す。


「魔国民を集めて、魔王城は私が防衛する。サイラスはクロコダイル族の治める封印各所を回ってエリアーナを探してくれ」

「言われなくてもだ。最悪の事態を想定して動くべきだ」

「承知してるよ」

「お前も気をつけろ」

「ありがとう」



サイラスが踵を返しパチンと指を鳴らすと、忽然と姿が消えた。


ベアトリスは二人のやり取りにきょとんと首を傾げる。エリアーナといえば、赤ん坊のようにアホなのベアトリスの見解だ。しかも戦えば強い。


そんな女の子が誘拐されたことがこの魔国の終わりにつながるという。魔国のツートップをここまで神妙にさせるとはどういうことか。

< 157 / 232 >

この作品をシェア

pagetop