可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
ベアトリスの疑問の瞳を優しく撫でたジンは眉間の皺を深くした。王妃に魔国の危機を正しく伝える。
「エリアーナはアホだが、稀に見る封印術の使い手なんだ」
「存じておりますわ」
「つまり、厳重な封印を解く技術もある」
「まさか、エリアーナ様が誘拐されたら……」
「各所に封印されている歴史の脅威が解放されてしまう可能性がある」
ベアトリスは王妃教育で培った知識で、最悪の状況をきちんと予期することができた。
「歴代最強と名高い竜族『カオス』の復活もあり得る」
両手で口を覆ったベアトリスは魔国を破壊する巨大なドラゴンを想像して、腰が震えた。ゴクリと息を飲んだベアトリスの頬をジンはまた撫でた。
「会話を聞いて、魔王様たちには犯人に目星があるように感じましたわ」
「さすが私の妻は賢いね」