可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
「ベアトリス、お願いがあるんだ」
「なんでしょうか。魔王様のためならこのベアトリス、誠心誠意尽くしますわ」
「君の気が強くて頼もしいところに惚れているよ」
立ち上がったジンはベアトリスを引き寄せて金の波髪を撫でた。
「ここから私は前線に立つことになる」
「魔王様自らですか?」
「アホの魔国民が烏合の衆で戦っても勝てはしない。私が前に立つのが一番被害が少なくて良い」
ベアトリスはサイラス講義で聞いた
『今の老いたジンなら負け』
の言葉が脳裏に浮かび、眉を下げた。
愛する人の死の可能性に身がすくむ。ベアトリスの優しい心情を察して、ジンのみぞおちゾクゾクが止まない。愛しい人に想われるのは快感だ。
「私が戦いに出る間、王妃の君には魔王城を守って欲しい。加護様の力を存分にお借りしてくれ」
「ぷるん!」
「魔王城防衛戦ですわね……」
「そうだ。だが加護様の防衛には、限界がある」