可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
「カオスはまっすぐここに来ますわね」
「そうなるように私が図らったからね」
「魔王様は本当に国民を大事にしていらっしゃいます」
ジンは理解の早いベアトリスに優しい視線を向け、またすぐに地平線を見つめた。
竜族は魔族が大勢集まっている場所を狙う習性がある。
城内に集まった大量の魔国民を目指してまっすぐ魔王城にやってくるはずだ。
超個人で暮らす魔族たちは大きな街をつくることがなく、バラバラに暮らしている。
そのため、ジンが意図的に魔国民を集めた魔王城が、今一番、民の密集率が高い。
魔王のいるこの魔王城を一直線で狙ってもらえば、他に被害がでない。魔王城内の魔族はカオスを呼び寄せる餌とも言える。
だが魔王が魔王城を守りきれば、一番被害が小さく済む策だ。
「私は当然、勝つつもりだよ。まあもう少し若ければと思わないこともないが」