可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
次の瞬間カオスの口から火の玉が三連射された。二つはかき消えたが、一つがまっすぐに魔王城に向かう。
光の速さの出来事だ。ベアトリスは何もできずに目を瞑った。
「ぷるーん!!」
魔王城に直撃するかと思われたその火球はぷるんの身体にめり込み、魔王城に傷一つつけることなく溶けていった。
「ぷるん様、ありがとうございます」
「ぷるん!」
ベアトリスは胸に手を当てて安堵した。ぷるんのおかげで魔国民を守ることができた。さすがに加護の力を思い知った魔国民も口々に言葉を零した。
「死んだと思った」
「俺も」
「加護すげぇな」
「人間の加護だって魔王様が言ってたぜ」
「あの人間が私たちを守ったってこと?」
ベアトリスの操る加護の力に、魔国民たちはお互いに顔を見合わせた。
全てを焼き尽くし破壊するだろう火の玉を蹴散らせるなんて。
あの人間は強いのではないか?という発想が生まれたのだ。
「あぁあ!魔王様が!!」
「ウソでしょう?!」
誰かの悲痛な声と共に、強烈な閃光がベアトリスの目をくらませた。大きな熱源と熱源が衝突したような轟音が耳を抉り、地面が震えた。
(爆発?!)
暴風が吹き抜け、ぷるんの中に強烈な勢いで何かが飛び込んだ。