可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
うさ耳をしゅんと垂らして泣きじゃくるエリアーナを、サイラスが引っ張り立ち上がらせた。サイラスがベアトリスを見つめる。
「カオスをもう一度封印するしかない」
「私もそう思っていましたわ。お二人が戻られたならば、私に考えがあります」
まっすぐに強いクリスタルブルーの瞳に貫かれ、サイラスは策を授けようとした口を閉じた。
サイラスは数多の弟子を持ち、ベアトリスは一番新しい弟子だ。
だが、彼女の成長は早く、もう巣立つ時がきた。弟子から手を離す瞬間を見誤らない。それがサイラスの賢者たるところだ。
「お前の考えを聞こう」
「エリアーナ様も、ご協力いただけますか?エリアーナ様なしではできませんわ」
まだ泣きじゃくっているエリアーナはサイラスに背を撫でられて、頷いた。
「やったるわ」
ピンクのウサギ眼には激しい憎悪が芽吹いている。魔王様の弔い合戦だ。
「魔王様を殺した奴は、うちが絶対封印したる」
「良い心意気ですわ。ではこれより、
人間と魔族の共同戦線と参りましょう」
ベアトリスは胸を張って、ぷるんに噛みつくカオスを見上げた。