可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
石の上に立ったベアトリスに風が吹きつける。ジンの血に染まった赤いスカートがなびき、頬を赤黒い血で化粧したベアトリスは判断を迫られていた。
ぷるんが死ぬまで加護を続けさせるのか。
加護を解いてぷるんを助け、
他の魔国民を危険に晒すのか。
「ご無理をさせて申し訳ございません、ぷるん様。
きっとあと少しです。必ずサイラス様とエリアーナ様が封印してくださいますわ」
カオスの封印作業が行われている場所と、魔王城の間には100メートルほど距離がある。だが、ベアトリスの声はぷるんに届いた。
生贄姫の左手薬指にある古臭い結婚指輪と、指輪に宿るぷるんは繋がっているのだ。
「ぶるぅ……」
ぷるんの返答が鈍くなっていく。苦悩するベアトリスが噛みしめる唇にはまた血が滲んだ。
(ぷるん様の加護を解いた瞬間、他の魔国民が犠牲になってしまうかもしれない。
でも、それでももう
賭けに出るしかないわ)
ベアトリスはクリスタルブルーの瞳に決意を灯した。