可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
「「「はぁあ???」」」
ついに人間の戯言を理解した魔国民たちは、怒号を上げ始める。早く人間国に帰れという定型句から、死んじまえ!のハイレベル剛速球まで容赦なくベアトリスに飛んでくる。
だが、ガイコツが服を着て話していようが、馬の顔と人間の肉体を持った上半身裸体の異形が叫んでいようが、魔族の有象無象の誹りなどベアトリスは何も怖くない。
(平気ですわ。だって私にはもうこの結婚指輪がありますもの)
ベアトリスが魔王ジンによってはめられた古臭い結婚指輪には
「初代魔王様の最強の加護」が宿っている。
魔王ジンと生贄姫であるベアトリス双方が離婚に合意するまで、決して外れない。
人間国から生贄として嫁いでくる生贄姫には、初代魔王様の加護が保証されていた。
初代魔王様の加護によって生贄姫は
魔族から肉体的に痛めつけられたり、
暴力的に殺されたりしない。
生贄姫を傷つけない。
それが人間国と魔王国間の契約だ。
身の安全が確保できる。
これがベアトリスにとって喉から手が出るほど欲しい条件だった。