可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─


殺す発想がまるでなかったエリアーナだが、二人の秒の合意にできるんだ!とワクワクしてしまった。


魔王様と賢者のタッグマッチである。エリアーナは大好きな二人のタッグ。最前列観覧を決め込みたかったが、ジンが命令を出した。


「エリアーナ、城に戻ってベアトリスを守れ」

「ギュガァアアア!」


叫び狂い、火球を撃ち続けるカオスからジンは魔王城を背に守る。両の手が真っ黒に焼け爛れていこうが、一瞬も隙を見せられない。


「しゃーないな!」


エリアーナは全く口答えせず、すぐに防護封印の中から出て移動を開始した。


「うちらの王妃様やからな!」


エリアーナだって知っていた。ベアトリスがジンの代わりに前線に立ち、誰よりもあの火の玉を退けた力の主であることを。


強さを認められないほど、エリアーナはアホではない。


(どんどん成長するエリアーナは最高だ)


エリアーナの背を見送り、サイラスは詠唱に忙しい口で言えない想いを胸で弾けさせた。


(僕の嫁、生き残って絶対抱く)


ジンはカオスの顔の前に浮き上がり、鼻先に竜剣を突き付ける。


「ギュガァアアア!!」


奇声と共に火球が三弾発射されるが、ジンが右手を犠牲にいなした。無限に火球を吐けるカオスは生存危機の高まりととも火球を吐き続ける。カオスも生き残りをかけて決死の反撃だ。


 
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