可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─


カオスだけを睨みつけ、お互いに視線を交わさないまま頷くと、仕事に取り掛かる。


竜剣は魔王の強力な魔力を纏わせてこそ力を力を発揮することができる。長い溜めの時間が必要なため、どうしても一人で使うのは不利な剣だ。


準備に時間が必要なジンの竜剣の弱点を、サイラスが埋める。


弱さを晒し、必要な協力を求めることができる。

信頼にたる仲間がいる。それが、ジンの強さだ。


「行くよ、サイラス」

「ああ、必ず生き残る」






愛する者がいる魔王城を必ず守る想いを乗せて、ジンは竜剣を振るった。

真っ黒の両手に渾身の魔力を宿した。


守るものが背にある。

それもまた、魔王ジンの強さだった。






二人の連携と死力により、カオスは首を落とされることになる。


だが、賢者サイラスであろうとも自由になったカオスを完全に防ぐことは難しく、


一発だけ。


たった一つの火球だけがサイラスの隣をすり抜けた。








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