可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
エリアーナのごめんね
ジンの命令を受けたエリアーナは城壁の取っ掛かりを跳び跳び、ふよふよ浮遊も交えて魔王城の中庭に飛び込んだ。
そこでは額の包帯に血を滲ませたベアトリスが、白いブラウスに赤い血をべっとりつけて、血染めのスカートを靡かせて一人で立っていた。
「アンタぼろぼろやん」
「エリアーナ様もですよ。ご苦労様でした。ありがとうございます」
無事に帰ってきたエリアーナにほっとしたベアトリスが、笑顔で労った。
「……ふん!」
だが素直に受け取れなかったエリアーナは、ツンとそっぽ向いてしまった。
「エリアーナ様、お腹に怪我をされたのですか?お薬を」
ベアトリスはエリアーナのメイド服のお腹部分が血に染まってすでに真っ黒になっているのを発見した。ワニにつけられた傷だ。だが、城に戻る前にサイラスにすでに治療してもらっていた。
「先生にしてもらったから大丈夫や!ごちゃごちゃ言わんといて!」
「そうでしたか。お節介をいたしました」
(またツンケンやってもうたー!!)