可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─

つい癖でツンとしてしまって、不本意でウサ耳が垂れた。しかし、いつも通りのエリアーナにベアトリスは何も気にすることなく安堵しただけだ。


(お元気そうでなによりですわ)


ジンとサイラスがいる森の方からは、カオスの叫び声と地響きだけが伝わってくる。


「魔王様とサイラス様は大丈夫でしょうか」


どんな戦いが行われているのか、ベアトリスにはわからない。また両手を組み合わせて待つしかないのだ。


エリアーナは城壁の端にある凹凸の石の上にひょいと立って、両手をパチンと合わせた。メイド服のスカートがなびく。


「あの二人が揃ってでけへんことなんてないわ」


エリアーナがぶっきらぼうにベアトリスに答える。


ベアトリスはクリスタルブルーの瞳をぱちくりした。エリアーナの口から出たのはベアトリスの不安を和らげるような言葉だったから。


「まさかのエリアーナ様に、優しくしてもらってしまいましたわ」

「や、優しくなんてしてへんやろ!めでたい女や!」


耳をぴょこぴょこ動かしたエリアーナが顔を赤くして悪態をついた。ベアトリスはこんな非常時なのに、可愛い仕草につい笑ってしまった。


魔国民たちも、エリアーナも

素直に変わっていくから愛おしく、

愛すべき存在なのだ。



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