可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
「エリアーナ様、何をなさるのですか?」
「うちができることは封印しかない。お、お、お」
「お?」
「王妃様がやったみたいに、うちも守る系の封印術を使ってみようってことや!」
またプイッとそっぽ向いてしまったエリアーナの言葉に、ベアトリスの胸が温かくなった。
エリアーナが「王妃様」と、呼んでくれたのだ。
認めてくれたのかと聞けば、またツンツンされてしまう。ベアトリスは持ちあがる口角を隠して小さく笑った。
「ニヤニヤすんな!」
クスクスされたエリアーナは耳をぴょこぴょこ詠唱を始める。
略式の詠唱が身についてきたエリアーナは、完全な球体ではなく、守り専用の障壁を自己流で編み出した。
ぷるんのように魔王城全体とはいかないが、中庭全体、ベアトリスを守れる大きさに気を配り硬度を上げる。
魔王様がベアトリスを守るようにと言ったからだ。
エリアーナは己の成長を実感していた。自己流の封印術の構築なんて玄人がやることだ。
(今やったら、言えるんちゃうかな……)
後ろでじっと静かに見守っているベアトリスに、エリアーナは喉を鳴らした。
悪い奴に捕まって脅されて傷を負った。本当に怖くて、悪いことをするのはダメだと心から反省した。
そんな経験をして、エリアーナは自分のやったことがどんなに恐ろしいことか痛感したのだ。
ずっと謝りたかったアイニャのことを、今ならきっと伝えられる。
「あのな、王妃様。実は……アイニャが死んだのな、うちのせいやねん。ほんまごめ」
「エリアーナ様!!」
ごめんなさいと、エリアーナの言葉が最後まで紡がれることがなかった。