可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
「はぁ?!また?!」


ベアトリスの声にエリアーナが振り向くと、眼前に火球が迫っていた。サイラスがたった一つだけ防ぎきれなった、あの火球だ。


エリアーナは手を鳴らし、用意していた封印壁を発動させる。


「んんんん-!こっちは大事なとこやったんやでアホトカゲぇえ!!」


両手を前に突き出してエリアーナが全力の魔力を込めて、壁を維持するが火球の威力は減らない。ジリジリとエリアーナが築いた封印壁を破壊していく。


ジンはこの火球を片手でいなす。だが、エリアーナは破壊的魔力の持ち主ではない。封印壁の強度は、ぷるんの加護にも遠く及ばない。


エリアーナにはこの火球を跳ね返す力も、消す力もない。

だが、背中に庇った王妃の命を守る使命はある。



「負けへん言うたやろトカゲがぁあああああ!!」



ベアトリスは火球とエリアーナの魔力の衝突で起きる衝撃波に耐えきれず、座り込んでぷるんが飛ばないように胸に抱えるしかできない。



「エリアーナ様ッ!!」


凄まじい衝撃音と共に火球の軌道が逸れ、エリアーナが吹っ飛んだ。エリアーナの封印壁により軌道が逸れた火球は、魔王城のもう一つの監視塔を少々削ったのみで空の向こうで爆発した。



エリアーナが勝ったと安堵したベアトリスの横に、バサリとエリアーナの身体が落ちて来た。


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