可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─

生贄姫の涙



「エリアーナ様?」


ベアトリスが慌ててぐったりしたエリアーナに駆け寄る。


エリアーナの右半身は酷く焼け爛れていた。


かわいい顔の半面は惨い火傷となり、目が焼き潰れ、美しい肢体半分が赤黒く焦げている。


ベアトリスは力が抜けてへたり込んだ。


もう何度、死の香りがベアトリスの横を通り過ぎただろうか。エリアーナの喉がヒューヒューとか細い命の音を立てている。



「エリアーナ様、死なないでください……」



エリアーナの焦げた右半身に触れてベアトリスは泣いてしまう。噴き出した涙が止まらない。


ベアトリスの涙が、エリアーナの眼があったはずの場所にぼたぼたと零れ落ちた。愛らしいピンクの右眼が焼け潰れて、もうどこにもない。
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