可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
泣き崩れるベアトリスにエリアーナの反応はない。エリアーナの右胸に泣き縋っていると、黒いぷるんがエリアーナの顔に着地していた。
「ぷるん!」
ぷるんがエリアーナの綺麗に残っている顔の上で跳ねて跳ねてベアトリスを呼ぶ。
ベアトリスはとめどない涙を流している顔を上げてぷるんを見た。ぷるんがぴょんぴょん跳ねているエリアーナの顔に違和感があった。
「エリアーナ様の眼が……治ってる?」
顔の半面が焼け爛れて、右眼は焼け潰れていたはずだ。なのに、エリアーナの右眼にいつの間にか形が戻っている。
何が起こったというのか。
ベアトリスはこの奇跡を見逃すわけにはいかない。エリアーナを治す手立てが、何かあるのだ。
「何かしら、何があったの?!思い出して、思い出すのよベアトリス!」
ベアトリスが今まであったことをふり返る。だがエリアーナが倒れてからの場面を何度ふり返っても、ベアトリスはぼろぼろ情けなく泣いていただけだった。
「泣いていた、だけ?」