可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─


ぼろぼろと泣いた涙が、エリアーナの潰れた右眼に落ちたはずだ。


「涙で、治った?!」


ベアトリスが涙をこぼした場所を観察すると、エリアーナの右半身にところどころ再生した赤い肌が見える部分が小さくがある。涙がポタポタと落ちた後のように見えた。




「私の涙に傷を癒す力がある?!」

「ぷるん!」




ベアトリスの肩にぷるんが戻り、飛び跳ねる。光明を見つけたベアトリスはすぐに両腕をまくった。この推測が当たっているかわからない。だが、もうできることはこれしかない。



「エリアーナ様!私が必ず、お守りいたしますわ!」



ベアトリスは両手で両目蓋をひん剝いて乾かし始める。目が乾き痛もうと全くかまわない。潰れてもかまわない。できる限りの涙を早く生成したかった。



ベアトリスは生まれて初めて、

積極的に泣く努力を開始した。



「泣くのよ!泣くのよベアトリス!!ぷるん様手伝ってください!私の目を決して閉じさせないで!

目がおかしくなってもいいから泣かせ続けてください!私の目蓋を貼り付けて!」

「ぷるん!」


ベアトリスは美しさなどかなぐり捨てて、目蓋をひん剥き血走った瞳の不細工顔をさらけ出す。


「早く早く早く!!涙が足りないわ!」


どうしても閉じようとする目蓋をぷるんの身体で固定して、充血した瞳で強制的に生成した涙をエリアーナの傷に落とした。


「エリアーナ?!」
< 212 / 232 >

この作品をシェア

pagetop