可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─

「良かった、無事で良かったですわぁ!!」



ベアトリスはエリアーナの命が伸びたことに感激して、今度は自然な涙がこぼれ始めた。ジンが肩を抱き寄せてくれるままに、やっとジンの胸に抱きつく。ジンがぎゅっと抱き返してくれる。再びこの胸に抱かれる時が訪れて本当に良かった。



「ベアトリスのおかげだよ。よく頑張ってくれたね。ありがとう」



ジンに顔を上げさせられて、頬に冷たい手が添った。ジンの手の平が黒く硬くなっていた。ベアトリスは涙を抑えることなく流し、ジンの手の平に擦りつける。


ベアトリスの癒しを与える神々しい仕草に、ジンはみぞおちがゾクゾクする。



「ベアトリス、キスの約束を果たすよ」

「たくさんして欲しいですわ。一晩中でも」

「望むところだよ」



ベアトリスがすっかり受け入れ態勢で目を閉じ、ジンに身体を委ねる。

ジンは興奮を胸に収めて、幼な妻の唇に約束を乗せようとした。



「魔王様!!」

「王妃様!!」

「「「大勝利ぃいー!!!」」」



地下室から、勝利を察知して飛び出してきた魔国民たちがベアトリスとジンの周りを取り囲んで大騒ぎし始めた。


命の危機が去った祝いを誰も止めるはずがない。


キスを止められたジンは片眉を持ち上げてヒクヒクしたが、ベアトリスは盛大に喜ぶ魔国民の愛しさに笑った。
   

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