可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
ジンはベッドの端にいるベアトリスの隣に座ると、ベッドが深く沈み、軋んだ。
ベアトリスのクリスタルブルーの瞳が嬉しそうに細められ、隣に座ったジンを愛しく見上げる。ジンは艶めかしい彼女の唇を齧ってみたい想いでいっぱいだ。
「ベアトリス、私は最近おかしいんだ」
「どうされたのですか?!え、ご病気ですか?!」
今まで朗らかに微笑んでいたベアトリスは、眉を顰めて急に不安を顔に大っぴらに現した。
500歳年上の夫は至極美しい。だが、彼がいつ死ぬかもしれないほどの高齢だと認識している。
あたふたするベアトリスの可愛い頬を撫でてジンが笑った。
「体はどこも悪くない。むしろ元気が漲って困っている」
ジンがパチンと指を鳴らすとベアトリスの肩に乗っていたぷるんが透明化した。ジンの魔力を注いだぷるんはジンの思い通りに透明化できるようになっていた。
「元気で困ることなどあるのでしょうか」
首をひねったベアトリスの肩をジンが軽く押すと、ベアトリスは背中からポスンとベッドに寝転がった。
透明のぷるんがベアトリスの肩から落ちてころころとベットの下まで転がって行く。
「あるんだよ。私の幼く可愛い妻が愛し過ぎてね」
ベッドに転がされても警戒心が湧かないベアトリスに、ジンのみぞおちがゾクゾクする。
ジンが今から抱く気があると知ったら、この幼い妻は怖がって泣いてしまうのか。知りたかった。
そんな戸惑う涙さえも見てみたい意地悪な気持ちが少しだけあった。