可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
サイラスはドン引きされると言ったが、本当にそうなのか試してみたい。
ジンの中では野蛮だと思われたくないという保守的な思考がなりを潜め、彼女を全部で愛すのに早いことはないという前衛的な思考が幅を利かせていた。
彼女の涙を飲んだおかげで、身体だけではなく思考さえ若返った気がする。
「ベアトリス、君が毎日可愛くて仕方ない。抱きたくて堪らないんだ」
「え?!」
ベアトリスの胴を跨いでベッドに乗ったジンを見つめて、クリスタルブルーの瞳がくるんと丸くなった。
「そんな、その魔族の通例ではまだそんな時期ではないと」
「私は魔王だよ?それはよく知っている。
だけど、私の幼な妻はそんな考えを飛び越えるほどに魅力的なんだ」
ジンが薄い寝衣からすらりと伸びるベアトリスの首に、ちゅっとキスを一つ落とすとベアトリスの身体がビクンと大きく飛び跳ねた。
「ぁ、魔王様、その」
ベアトリスは自分の身体のとびっきりの反応に驚いて、両掌で鼻から下を覆った。瞳に一気に熱さが集って噴き出しそうになる。
ジンが触れるとすぐに潤んでしまうベアトリスがなおさら愛しく、ジンはゾクゾクしてしまう。
「ダメかな?抱かないと言っていた私が、急に態度を変えたら怖いかい?」