可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
魔王城は孤立した城だ。周りは鬱蒼とした森に囲まれていて、しばらく行けば湖もある。

部屋に風呂がないので、ベアトリスは外の湖で体を清めるしかない。



魔王城を抜け出したベアトリスは、魔王城の近くにある夜の湖にたどり着いた。


(誰か来ないうちに早く浴びてしまわないと)


月夜の下で、ベアトリスは湖の傍らで一枚一枚、服を脱ぎ始める。指輪をつけたままなので、裸の状態でも初代魔王様の加護が守ってくれる。


だが、それでも屋外で裸になる水浴びは心もとない。


ベアトリスは月明かりでさらに若く輝く肢体を晒して、静かに入水した。


熱くも冷たくもないぬるい水の感触が身体を包む。加護によって冷たすぎる水も、熱すぎるお湯であっても適温に保たれる。


常に美しくありたいベアトリスにとって入浴は大事な習慣だ。


頭の上まで水に浸かってから浮かび上がり、下半身が浸かったままの状態で立ち上がる。


「ニャ」

「あれアイニャ?もう帰ってきたのにゃ?」

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