可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─


アイニャを殺されたりしたらどんなに強がっても泣いてしまう溺愛ぶりは一目瞭然だ。


だが、なぜか使い魔を大事に想う概念がわからないらしい魔国民たちが、アイニャを狙ってくることはなかった。


文化と感覚の違いにベアトリスは心底胸を撫でおろしていたのに。


魔王だけはアイニャを狙う知恵があったのかもしれない。


ベアトリスは息を飲んだ。


「上がらないのかい?」


膝の上のアイニャを粗雑に扱う風はないジンは、肩まで水に浸かって体を隠すベアトリスに声をかける。


「服がそこにあるので、出られませんわ」

「ああ、気がつかなくてすまなかったね」


クスリと笑ったジンは服を取ってくれる動作をまるでみせない。さすがにそこまで親切ではないようだ。湖の中のベアトリスと陸上のジンのにらめっこが続く。


「服を渡して頂けませんか?」

「なぜ?」

「なぜって、裸を晒せませんわ」

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