可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
「君は私の妻だろう?
私には世界中の誰よりも裸の君を見る権利がある」
「そ、そうかもしれませんが。合意していませんわ」
「結婚の儀を交わしたんだ。全てに合意のはずだが?」
口論には自信のあるベアトリスであったが、ジンの主張はド正論だった。
恥ずかしさで緊張しているのもあって、うまい反論は見当たらなかった。
妻にはなったが、結婚式以来、ジンに部屋に呼ばれるどころか声を聞いたこともなかった。
加護のついたベアトリスをジンが無理やり抱くことはできないので、当然初夜など過ごしていない。
「このまま朝になるまで裸の君が水に浸かっているのを見るのも、悪くはないね。
朝になったら魔国民たちを呼び寄せて君を晒すのも良い」
ジンの言葉にベアトリスが唇を噛む。
さすがの加護も服を作ってはくれない。
服を取られるなんてこんな単純な行為が、ベアトリスに与えるダメージは大きい。
やはり魔王様の名前はダテじゃない。ジンは、魔国民の誰より幼い妻を追い詰めるのがお上手だった。
このまま裸で魔族たちの視線に辱められるとしたら、ベアトリスと言えど泣いてしまうかもしれない。
ベアトリスが唇を噛んで恥辱を想像していると、ジンが目を細めて笑った。