可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─

「君がどうイジメても泣かないと聞いていたけど、案外あっさり可愛く泣いてくれそうじゃないか」


ジンはクスクス機嫌良さそうに、ベアトリスをからかって笑った。幼な妻を泣かせようと追い込んで喜んでいるなんて大層な悪趣味である。


「私のために泣いてくれるなら、そんな酷いことはせずに服を渡すよ」

「私は絶対に泣きませんわ」

「じゃあ、君は裸のままだよ?

魔国中が裸の君を喜んで見に来るだろうね」


膝に乗せたアイニャを優しく撫でたジンが、さあどうすると首を傾げる。ベアトリスは肩まで水に浸かったまま考えた。


このまま日が明けるまでにらめっこを続けていたら、本当に魔国民たちの見世物になってしまう。


そうなるよりは、断然こっちの方が被害が少ない。


(強くあるのよ、ベアトリス。

魔王様に裸を見られたくらいで、死にはしないわ!)

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