可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─

壁にぶち当たると弱音を吐いてもらえる先生の立場は、心底美味しい。サイラスはスッと妖しく黄緑色の目を細める。


ジンがエリアーナを恋愛対象に入れたとしたなら、エリアーナを連れて国外拉致の計略すらあるサイラスである。



(ジンは人間なんかに興味を持ってる。

赤ん坊にも満たない、まだ「細胞」みたいな生贄姫を性対象にする異常性癖だから、安心だな)



ジンがまるっきりエリアーナを相手にしていないので、サイラスは余裕を持ってエリアーナを手の平の上でころころするのを楽しんでいた。


長寿族であるサイラスの恋は非常に悠長だ。現在80歳のエリアーナが100歳になるくらいまでにサイラスに落ちてくれれば本望である。


「なあ、先生、聞いてる?」

「うん、聞いてる。そうだな、生贄姫を泣かせる方法か」

「先生の知恵、貸して?ええやろ?」


小首を傾げてサイラスを上目遣いで見つめるエリアーナは、特別に可愛い。何をしても、サイラスにとってエリアーナは特別に可愛い。


けれど、サイラスの策に乗って悪いことをするエリアーナが特に大好きだ。


「今度僕と一緒にお昼寝してくれるなら、いいよ?」

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